を発見してしまったのだ!!
サブい状態だとか言って取れない笑いを取りにいく場合ではない。
何だか、分かるか?
サッカーの控え選手じゃないぞ。
ホ、ホ、ホ、ホホホホ、・・・落ち着け、俺。
ホモ雑誌だ!
資料がなかったので他のホモ雑誌を参考に載せておく。
その時、台所のほうから
「砂糖いるよね?」と、
例の物柔らかな声が聞こえてきた。
「ハ、ハイぃぃ」
という俺の声は、
いくら練習してもできなかった透明感のあるファルセットになっていた。
奴が、二つのコーヒーカップを手に俺の前に座った。
俺は
身長171、
体重、60キロ足らず・・・。奴は?
身長185くらい、
体重は、100キロ近くはあるだろうか??
しかも、今まで「ガタイがいいな」くらいに思っていた奴の身体は
腕一本とってみても
これ見よがしに筋肉ムキムキなのだ!
(畜生、スポーツをやってやがるな。)
しかし、相変わらず、奴は優しく、
「なにか、食べるものも買ってこようか?」
「いや、イイデス・・・」
この状況では蚊の鳴くような声しか出なかった。
いや、シラミやノミでもこんな声は出るまい。
俺は小さな命の儚さをしみじみ思った。
「モノノアハレ」を感じる心がこのとき、俺の中に芽生えたのだ。
奴のつぶらな瞳が、俺を見ている・・・・。
猛獣のような目ではないのが逆に不気味だ。
うさぎを狙う、大型の蛇の瞳はこんなだろうか?
無表情でいて妙につぶらで可愛い。
ウサギを狙う、コブラ
はっつ!何を考えているんだ?俺は?
現実逃避してる場合じゃない。
人間は追い込まれると妄想に引き込まれ、
目の前の現実から逃避したくなるみたいだ。
俺はついにガキの頃に聞いた昔話、
「マッチ売りの少女」の境地に達したのだ。
戦力を自分なりに分析してみる。
奴の推定戦闘力を100とすれば、俺は、30くらいか?
俺をスライムとすると、奴はレベル19くらいの勇者か???
絶望的だ。
これが喧嘩なら、後先、考えずに奴に殴りかかれるだろう。
怒りという熱い感情をぶつけることが出来るだろう。
たとえ結果はどうであれ・・・。
しかし、この場合は
奴はハンターで俺は獲物だ。
負けることは即ち、死を意味している。
女が何故、
ときに男に対して必要以上の怯えを抱くのか?痛いほどそれが分かったよ。
コーヒーを飲み終え、あくびを一発かました奴は
「そろそろ寝ようか?」
と、俺に問いかけてきた。
普通なら、友人の家に泊まりに行っても、こう言うだろう。
「そろそろ、寝ようや。」(注 俺は大阪人)
「そやな。」
気に留めることもないセリフだ。
しかし、今回限りは、俺は声を大にして叫びたかった。
「俺は新妻じゃねえ!!」
普通なら何てことも無い台詞に、これ程深い意味があったとは・・・。
「寝る」という言葉は、スヤスヤ眠るだけの言葉じゃなかったんだ!
決して寝てないくせに、セックスするくせに、何故、
「寝る」というのだろう?
ねる 0 【寝る】
(動ナ下一)[文]ナ下二
ぬ
(1)「眠る
(1)」に同じ。
「ゆうべはよく〈ね〉た」「人の〈ぬる〉味寝
(うまい)は〈ね〉ずて/万葉
3274」
(2)寝床に入る。床
(とこ)につく。就寝する。
(ア)睡眠や休養のために寝床に入る。
「もう〈ねる〉時間ですよ」「〈ねる〉前に歯を磨く」
(イ)病気で一日中寝床にいる。寝こむ。病床にある。
「風邪で〈ね〉ている」「まだ〈ね〉たり起きたりの状態です」
(3)異性と同衾(どうきん)する。共寝する。
「女と初めて〈ね〉た」(4)横たわる。
調べてみると、確かに書かれていた!!でも、
同性とのことは書いてないだろう!!
いや、本当に奥が深い・・・。
「寝る」という意味。
・
・
・
いやいやいやいや
深い意味なんてないし。
この場面に限って言えば
これは死刑宣告だ。
この状況を打開するには・・・。
「ごめん、突然用事が出来ちゃった。」
あり得ない。散々、予定なんてないよと連発したし、
旅先のストリートミュージシャンにどんな急用があるのだ・・・。
「やっぱり、悪いから、外で寝る。」
強引過ぎる!!既にコーヒーを一杯飲んでくつろいでしまった・・。
間が悪すぎる!
「せめて、もう少し早ければ。」
レントゲンを見て進行してしまっているガンの説明を患者の家族にする医者のように
悲痛な気持ちで硬直していると、
「ふとんひくから、机どけてよ。」と、
奴が押入れから、花柄の布団を出してきた。
しかし、くったくなく、俺の為にいそいそとふとんを敷いてくれる奴を見ていると、
(まて、何を先走ってるんだ、俺は?
こんなに親切にしてくれてるんだぞ?
いや、俺の為にふとんを敷いているのか?
奴自身の為じゃないのか?
いや・・・・・、
人間、そうは悪い奴はいないはずだ・・・。
それに
、あの雑誌だってたまたま、友達が置いて行っただけとか・・・。
いや、まてまてまて、
都合のいい考え方はよそうじゃないか。
しかし、
仮に彼がゲイだったとしても、親切なアンちゃんだろ?失礼じゃないか?
人を疑いすぎるのはよくないぞ。)
俺が心の中で
「母を訪ねて3千里」並の旅路を続けていると、
布団を敷き終わった奴は俺のほうを振り返って言った。
「一緒に寝る?」
続く
次回、第B章、緊迫した場面の連続に俺の神経は耐えられるのか!?
もはや、俺のミッキーマウスと奴のコンバットナイフの戦いだ!
お前、なんだ?その格好は??
乞う、ご期待!
一体、何なんだ?
この違和感は?
山手線のJR大塚駅から、彼のマンションまで連れ立って歩いていく道すがら、
その正体を考えたが、分からない。
ただ、この違和感は、間違いなくこの兄ちゃんの雰囲気から来るものだった。
やがて、俺達は、彼のマンションについた。
部屋の中を見るなり、
俺の違和感は更に激しくなった。
(なんだ、この部屋は。妙に、妙に男くささが無い・・・・。)
「俺は今夜、飲みに行く約束があるからそれまで奥の寝室で寝るよ。
布団出すから君は居間で好きに寝てくれ。」
「う、うん」
いや、何処といって、変なわけじゃない。強いて言えばコギレイ過ぎるということくらいだが。
しかし、俺の心臓は訳も無くドキドキ高鳴り始めた。
恋に落ちた訳ではないぞ。
「ま、ゆっくしてよ。寝る前にコーヒーでも入れるよ。」
彼は、台所にいそいそとコーヒーを作りに行った。
その後姿を見送るなり、俺は部屋の中をすばやく探索し始めた。
なんだ、この俺の胸の高鳴りは??
ウ゛ェーオ゛、ウ゛ェーオ゛
昔の特撮ヒーローの基地に敵が来襲したときは、
必ずこんな警報が鳴っていた。
正に、
めーでー、めーでー、俺の胸の高鳴りは何か、危険を俺に伝えようとしている!!
その時だった!!
全ての謎が解ける、いや、うすうす感づいていたのかもしれない、
俺の不安を裏付けるものが見つかってしまった。
部屋の隅に詰まれた雑誌のなかに
アレが、アレが・・・。
今でも、あの衝撃は忘れない。
矢追のUFO番組で宇宙人を初め手見たときに近いものだった。
俺は、今は亡き伝説の雑誌