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イースター祭の悲劇
第@章
俺はガキの頃、今より子供だった。当たり前だが。
夢中になると回りが見えなくなるタイプなのは、今でも変わらないが、
とにかくよくやりすぎてしまって、いやな思い出を量産した。
これはそんな思い出の一つだ。
俺の母方の祖父母がクリスチャンだった関係で、ガキの頃はよく日曜学校に行った。
ボーイスカウトにこそ入隊しなかったが、催しものやハイキングにはよく参加したものだ。
イースター祭
というのがあるがご存知だろうか?
由来などは今もって知らないのだが、卵だ。タマゴが登場する祭りなんだ。
そのイースター祭の日の教会主催のキャンプに混ぜてもらった。
なろー画
だいたい俺と同じ年齢くらいのガキが4〜50人、そして、保護者やスタッフをいれると
100人近くの大所帯で出発した。キャンプの場所は全然覚えてない。
が、とにかく、自然がたっぷりの場所だった。
自然といえば、虫だ。
男のガキは昆虫が大好きだ。
自然とはその昆虫がいっぱい居るところだ。
ガキの俺にとってそういう認識が全てだった。
終わってみれば、確かにいっぱい昆虫がいた。
なろーガ
ガ
とかな。
ガ
しかいなかったがな。
まぁ、とにもかくにも、イースター祭りのキャンプに行ったわけだよ。
始めは父兄に連れられた見知らぬガキ同士、みんなモジモジしていた。
友達になりたいのに声をかける勇気が無い。
みんな覚えているだろうか、誰にでもそんな時期があったろう。
しかし俺はガキの頃、
全然人見知りをしない小憎らしいガキ
で、
目的地の駅につく頃には、完全にこの雰囲気を克服していた。
誰もが恥ずかしがってママのスカートから手を離せない間に、
その集団の中を自由に泳ぎまわっていた。
なろー画
するとどうだろう。
他にも数人の小憎らしい、不敵な顔をしたガキが物怖じもせず
親から離れて歩き回っているではないか。
俺達はすぐに意気投合して、4人で徒党を組んだ。
ハナタレ(洟を垂らしている)、ちび(小さい)、はげ(スポーツガリだ)と俺は、
他の気の弱そうなマザコン野郎共を押しのけ、
駅からキャンプ地へ向かうハイキング道を我が物顔でのし歩いた。
「カブトいるかな?」
「いる、いる、絶対いるよ!」
「取りに行こうな!」
実際は帰るまで、
ガ
以外の虫にはほとんどお目にかからなかったが、
この時は後でお目にかかるであろう
30cm級のカブトムシ(そんなものはいない)
を
想像して、うきうきしていた。
キャンプ場について、部屋(キャンプ場といってもロッジに泊まるのだ)の割り当ての時に
俺達のグループが注目を浴びた。
大人達があらかじめ決めていた部屋割りを良しとせず、
4人を同じ部屋にしろと駄々をこねたのだ。
親同士も知らぬ間にいつの間にか出来た不良グループ。
当事者の親達は赤面し、他の親たちは困ったような顔で笑っていた。
こんなクソガキ共の言う事にいちいち耳を貸してたらろくな事にはならない。
この時もそうすべきだった。
「せっかく仲良くなったんだから」などと、
変に物分りの分かりの良い判断を下さなかったら、
後に起こる悲劇は回避できただろう。
ていうか、俺ならしばくね。ガキの為にもならん。
こうして、突如、同じ部屋に宿泊することになった親達は、
「言い出したら聞かない子でねぇ、すいません」
「いえいえ、うちの子も学校でいつも叱られるんですよ」
はにかみ笑いながら言い訳めいた挨拶を交わして
そこはかとなく漂う気まずさを誤魔化すしかなかった。
俺達は、部屋に入るなり、この一泊二日をどのように過ごすかの計画を綿密に立てた。
「えーと、今から晩御飯までは、他の奴誘って野球しようぜ!」
「ご飯食べたら、懐中電灯をもってカブト取りに行こうぜ」
「帰ってきてからはゲームしようぜ!」
俺達は、この二日はどんなに素晴らしい休日になるだろうと興奮しきって、
今にもぶっ倒れそうなくらいわくわくしてた。
しかし、えてして、
キャンプなどというものは大人たちが立てた計画の下で集団行動を強いられるのだ。
ガキに自由は許されない。
ロッジに荷物を置いて一服した俺達は
いったん、キャンプ場の広場に集められた。
スタッフのひとりの眼鏡をかけたお姉さん
-年の頃は22〜25くらいか。今ならすぐに品評会が始まるのだろうが、
俺達はガキだ。ただのお姉さんという認識しかない-が、
子供に向かって話すとき特有の甲高い、鼻にかかった声で、
「みなさ〜ん、これからぁ、二日間、楽しく過ごしましょうね〜」
と話し始めた。
「は〜い!!」
と、ガキ共。
「これから〜、まずぅラジオ体操をします。体操が終わったらぁ、みんなで
ドッヂボール大会をしましょうね!その後はぁ、ご飯を食べてからぁ、
キャンプファイヤーです。そして、寝る前にみんなで集まってぇ、紙芝居を見たり、
歌を唄ったりします!」
「わ〜!!」
と湧き上がる歓声。
いきなり、計画挫折。
なんでラジオ体操なんだ。ラジオ体操は8歳にして、既にうんざりだった。
夏休みの早朝も一度も参加したこともねぇ。
はんこ集めてノートやえんぴつなんかもらってられるか!
買えばいいんだよ、買えば!
かったるい前奏につづいて、人生の苦痛も、悲哀も知らないような、
というより、人間性が全く感じられないような独特の変な明るさを持った
あの男の声が聞こえてくると、本当に、ブルーはいる。
「ラジオ体操、だいい〜ち、」
ちゃん、ちゃちゃ、ちゃんちゃん
ちゃん、ちゃちゃ、ちゃんちゃん
ちゃチャチャチャ、ちゃちゃちゃちゃ、ちゃん、ちゃん、ちゃん
ポロン♪
いかなる反論も許されない。考える時間も無い。
まごまごしていると
「イチッ、ニッ、サンッ、シッ」
と、どんどん進んでいく。
ラジオ体操は俺にとって、体制に反抗する心を養ってくれた時間だった。
だいたい、カセットテープが音源なのに、なんでラジオ体操なんだ?
あれじゃ、カセット体操だろうが!!
社会の矛盾!!
それで、ドッジボール?おいおい、ガキじゃあるまいし(ガキだ!)ドッヂボールとか
やってられるかよ!顔面セーフかよ!!とろい奴はごまめかよ!!
しかし、本当に自分で書いててもうんざりするガキだ。今の俺でもよう扱わん!
こういう変に大人ぶったガキはやだねぇ。
こういう奴が中学あたりで、タバコや酒を飲んで
「俺はお前らより大人だ」
とすました顔していきがるんだぜ。
キャンプファイヤー
はいい。ガキは火が好きだ。危ないこと大好きだ。
だが、その後の「みんなで集まって本を読んだり、歌を唄ったり」ってなんだ?
超面白くなさそうだ。俺は、嫌なんだよ!
そういうことが!楽しめたらどんなにいいか!
とつくづく思う。
だけどな、つまらない紙芝居や歌をみんなで楽しむってことが出来ないんだよ!
・・・、隣の奴の顔を見てみる。
何も考えずに与えられたプログラム通りに
一心不乱に言いなりになって歌ってる奴。
落ちがわかってる昔話の紙芝居。
しかも何の芸も無い棒読みのようの素人が演じる。
それに夢中になってる奴。
ああ、うんざりだ。
はなたれ、ちび、はげに目くばせすると、
「我が意を得たり!」
と、みんな自分達の計画が台無しになったことについて不満の表情だった。
今から、思えば俺を含むこのガキ共は8歳にして社会不適合者の素質たっぷりだった。
ラジオ体操は、適当にやった。
俺達4人は、スタッフのお兄さん、お姉さんから
「ほら、もっと元気を出して!」
と度々注意された。
ドッジボールは4人で、一番むかつく、メガネのスタッフのお姉さんに
集中砲火を浴びせた。一瞬、大人である筈のお姉さんがマジの目つきで
俺たちを睨むのを感じた。異様な緊張感のあるドッジボール大会になってしまった。
この時点で、大人達は、
俺たち四人がこのキャンプの問題児軍団である事を認識し始めたようだ。
俺なら、しばくね。こんなガキ共は体で分からすしかないんだよ。
紙芝居は予想通り、日本昔話だった。「もったいないお化け」という
タイトルだったか。市川悦子の真似が上手けりゃいいってもんじゃないだろ!
歌はもう最悪だった。童謡なんか歌っても全然、面白くない!!
小学校、中学校と音楽を授業で受けたが面白いことなんて一つも無かった。
俺が音楽自体が面白いと思ったのは"The Beatles"に出会ってからだ。
the Beatles
ガキをなめるんじゃねぇ!
しかし、不思議なことに、俺の音楽のベースは童謡らしい。
聴く人、聴く人が必ず、「みんなの唄にだしたらうけるよ、きっと!」
という感想をくれる。何故なんだ!?
唄も終わって、どうしようもない疲労感を覚えていた俺たち4人は、
「明日もこんな感じなのか?」
「自由時間は無いのか?」
と、ブーブー言い合っていた。
その時、例のメガネのお姉さんが、
「明日の朝、8時から、宝探しゲームをします!!」
と、俺たちが想像もしていなかった事実を発表した。
宝探しゲーム!!それはガキの永遠の夢!
不平不満はどこへやら、他のガキ共と一緒に俺達は
お姉さんの説明に耳を傾けた。
ルールはこうだ。
夜に大人たちがキャンプ場のあちこちにタマゴを隠す。
その卵の中には番号札が入っていて、探し当てた子供には、
その番号札に応じた、お菓子やら、おもちゃがプレゼントされる。
隠されたタマゴは、この広大な、キャンプ場の敷地内に100個。
この一発逆転の、素晴らしいイベントに、俺達はガゼン、復活した。
「めっちゃ、燃えるな!!」
「おもしろそうやな」
他のガキ共も異常な盛り上がり方を見せている。
なんといっても、
おもちゃやおかしという実益がともなった遊びなのだ。
これぞ、宝探しゲーム!!
この時、時間は午後8時。後から聞いた話だと、スタッフや父兄が協力して、
タマゴを隠したり、ゲームの進め方等を調整するために
午前2時まで頑張ってくれてたそうだ。
それがまさか、俺達4人のクソガキ共のために全てがぶち壊しになるとも知らずに…。
続く
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